2001年9月8日(土)曇り後晴れ
高丸〈黒壁〉(1316.1)

池ノ又谷砂防堤横の広場(6:50)→稜線上(8:00)→1016mピーク(8:40)→
高丸山頂(11:45〜13:45)→1016mピーク(15:50)→広場(16:40)

高丸(黒壁)

高丸(黒壁)山頂
 念願であった高丸へ行って来た。
 この山には幾つか呼び名があるようだ。岐阜100山には「黒壁」と紹介されており山頂にも「黒壁」と記されたパネルがあったからこれが一般的な呼び名なのかもしれない。他に「鳥ヶ東山」と山の南にある谷の名を取った呼び方もあるようだ。ここでは何となく僕がなじんでいる「高丸」という呼び名を使う。
 何れの呼び名にしろ地形図上にその名は記されていない。三角点と1316.1という標高が示されているのみだ。そのためか、標高から言えばこの地域ではかなりの高さ(能郷白山、伊吹山に続く3番目)を誇っているにもかかわらず登る人が少ない山だ。果たして自分に登ることができるのか。
 高丸に登るルートは幾つかある。鳥ヶ東谷を遡行して稜線に取り付くのが最も一般的らしい。他に南の1016mピークから南尾根を伝って登るルートも紹介されている。他にも幾つかあるが何れも容易なルートではない。今回は鳥ヶ東谷を遡行しようとも考えたが雨後のため不安があり1016mピーク経由で登ることにした。
 坂内村川上から夜叉ヶ池方面に向かう。池ノ又谷に入り途中の新しい砂防堤がすぐ左脇に見える広場に車を停め準備を整える。6時50分出発。
 左手側の山腹にに植林帯が見える。今回はその植林帯を利用して尾根上に出ようという計画である。
 舗装路をわずかに夜叉ヶ池の方に歩いていくと右手に小さな谷がある。その谷の右岸側にかねてより下見をしておいた植林作業道がある。細い作業道はつづら折りに山腹を登っていって植林帯の中腹に出る。そこからは植林と雑木林の境を辿るように急斜面を登っていく。わずかに登ると赤テープの目印が所々にしてありそれを辿っていく。ころ良いところまで進んで雑木林の中を直登し尾根上に出る。
 尾根上は僅かに踏み跡らしきものがあるもののすぐに分からなくなる。尾根筋もはっきりしないので帰りのため適当に目印をしながら雑木林の斜面を登っていく。他の目印も時折あるが間隔が広い。
 上部に行くと笹が出てきて歩きづらくなる。鉈を出して適当に刈りながら進んでいく。
 斜度が緩くなってくると稜線上に出る。笹はやや濃くなるが踏み跡が僅かにありそれを辿る。樹木の間からこれから登っていく高丸の形のいいピークが見える。
 緩やかな斜度の稜線は植林帯を越えて若干斜度を増す。すでに全身は濡れた笹の中を歩いてずぶ濡れ。谷を遡行してもこんなには濡れないだろうなあと思うほどである。
 稜線の踏み跡は1016mピークの手前で浅い溝に出る。そこを左折して下へ続く溝に目印があるので辿っていく。溝はやがて灌木帯の中に入っていく。灌木帯の中を歩くのを嫌って左手の植林の山腹をトラバースしていく。地形図を見るとそのままいけば高丸南尾根へ続くコルへ出られるはずだ。案の定、コルに出て南尾根に取り付く。

山頂より蕎麦粒山方面を望む

東隣の烏帽子山
 尾根ははじめそれほどの斜度もなく笹も濃くない。しかしそれも束の間で笹が密生してきて行く手を阻む。手にした鉈で所々刈りながら進んでいく。僅かだが踏み跡もあり所々に赤テープやオレンジの生地の目印もある。
 尾根は先に進むと斜度を増す。それに比例するように笹もまた濃さを増す。行けども行けども背丈を超す笹の海だ。かき分けかき分け時々は刈りながら進んでいっこうにペースが上がらない。時々笹が若干薄くなり踏み跡が現れるところもあるがそれも僅かである。何時まで笹が続くのか、今どの辺りにいるのかさっぱり分からないながらも気力は十分だ。いつもならこんな状態が続いたらもう嫌になって弱気になっているのに本日は天気がいいせいもあってか気が萎えない。時折現れる目印も勇気をくれる。
 いくら笹を漕いでいっても山頂に近づいたという感じがしない。右手側からの樹間から見える東側の稜線がまだ上の方に見える。
 藪漕ぎ2時間あまり、上部に至るとさっと笹が消えるところがあり久しぶりに歩くことだけに集中できると思ったのも束の間、すぐに再び笹原に突入する。
 何時まで笹を漕げばいいのだろうと進んでいくと斜度が緩くなってきて先に青い空が見えてきた。相変わらずいく先は笹だらけだがもう登っていく先がない。ということは山頂だ。しかし笹を漕いでもどこが三角点か分からない。適当に進んで笹原を見回して笹が薄くなってそうなところに向かってみると果たしてそこが三角点の刈り込みだった。
 11時45分到着。三角点の刈り込みは2m四方ばかり。周りは笹と灌木で、立つと笹越しに北から東にかけて展望がある。西と南側はちょっと灌木が邪魔している。南側は登ってきた尾根の上部に戻ると眺めることができる。
 少し笹を漕いで北にある灌木の上に立ってみる。足下が不安定だが展望がぐっと良くなる。北側に見える三角のピークは美濃俣丸、その向こうに笹ヶ峰。東側には不動山とその向こうの千回沢山。そして眼前には烏帽子山がいい形をしてそびえている。奥美濃の名だたる山々が目の前に広がる。左手の方にボリュームある山塊が見える。三周ガ岳?それにしてはいつも見なれている山容と違いすぎないか、と地形図を見たらやはり三周ガ岳のようだ。南側から見るとあんなにボリュームある山なんだ。この三周ガ岳の姿を見ただけでもここに登ってきて良かった。

ボリュームのある三周ガ岳

人知れずある沼
 いい天気といい眺めにビールで乾杯。登りはかなり苦労したがそれは報われてあまりあるものとなった。
 帰りは、登ってきた跡を辿ればいい。しかし、笹原ばかりでその下に漕いだ跡は埋もれてしまって分かりづらい。笹は登りと下りで見え方が違うのだとこの時初めて気がついた。嫌な予感がしたが下る尾根さえ間違わなければ問題ないだろうとそれだけ気をつけて下ることにした。しかし、間違えてしまったのである。
 笹原の消えたところ辺りで進む方向を間違えたらしく一本西側の尾根を知らない内に下っていた。ちょっと雰囲気が違ったのでおかしいなと見晴らしの良いところで先を確かめると1016mピークは左側の尾根から続いている。これはいかんとちょっと戻って笹藪の斜面をトラバースして何とか正しい尾根に戻った。この戻るのが大変で滑落したらやばそうな崖の上に出たり笹の密生したところを横切ったりと30分ほどウロウロしてヘトヘトになった。一時はこのまま正しい尾根に辿り着けないのではないかと思ったほどだった。
 正しい尾根に辿り着いてからは慎重に慎重に下った。そのおかげで後はそんなに問題もなく下れた。途中、1016mピークとのコルの辺りでウロウロしていて偶然沼地を発見した。灌木の中にひっそりと水草を浮かべた様子が神秘的だった。
 今回の反省。ひとりで笹藪こぎするときは鉈で時間をかけて刈りながら進むよりも目印をこまめに付けた方がいい。