野伏ヶ岳(1674.3)


2006年3月25日 土曜日 (晴れ) 単独 


6:05  白山中居神社駐車場

:23  和田山牧場跡

8:00  ダイレクト尾根取付き

8:50  中間点(ブナの大木)

9:30  北東尾根ジャンクション

9:42〜11:38 野伏ヶ岳山頂

11:44 正面ルンゼ

13:14 駐車場


晴天の天気予報のもと、心躍らせて野伏ヶ岳へと向かった。野伏ヶ岳は以前から一度はいってみたいと思っていた山だ。しかし、ガイドブック等に熟達者の領域という表記を見る度に自分にはまだまだ無理と先送りしていた。今年になって白尾山、毘沙門山で出合った方から野伏ヶ岳の話を聞きどうしても行きたくなり機会をうかがっていた。しかもできればスキー(ショートスキー)で挑戦したい。ここにきて大分スキーにも慣れてきた。そして今月の山行で大分体力も付いてきた。よし、ということで今回の決行となった。

和田山牧場跡より野伏ヶ岳
早朝、大垣を出発しいつものように東海北陸自動車道を白鳥ICに向かう。白鳥ICから桧峠を経由して石徹白へ。集落の中を通り過ぎていくと白山中居神社の駐車場に着く。駐車場には登山者のものだろうか、すでに数台の車が停まっていた。更に進んで石徹白川に架かる橋の手前にも駐車スペースがあったがこちらにはまだ一台も車はない。何となく気が引けて神社の駐車場に戻って車を停め準備を始める。そのうち夜が白み始め樹間越しに朝陽に照らされた野伏ヶ岳の山頂付近が見えるようになる。美しい。あの美しい山頂に向かうのかと思うと気持ちが高ぶってくる。

隣に車を停められた方も登山の準備を始めている。お話を伺うとこの方は、野伏ヶ岳ではなく芦倉山に向かうのだそうだ。時間にして登り4時間半ほどかかるそうだ。見たところ単独で向かわれるようだがすごい。

まずは、スキーをザックにくくりつけ除雪された林道を歩いていく。小白山谷に架かる橋を渡ったところで除雪は終わっており雪の上に上がりスキーを履く。雪は固く締まっている。この状態が山頂まで続くとするとスキーでは登りにくくなる。また、滑降も不安になってくる。今日は気温が上がりそうな予報だったのでなんとか雪が柔らかくなることを祈りつつ雪の林道を進んでいった。

所々倒木のある林道を進んでいき最後はショートカット道を通って和田山牧場跡の大雪原に出る。これまで文字や写真ですばらしい雪原だと情報で知っていたが実際に目にするとその情報以上にすばらしい。真っ青な空の下、圧倒的な大雪原とそれを囲む真っ白な峰々。思わず見とれてしまう。ここで一日過ごしたいくらいだ。しかし、残念なことに真っ白な雪原の中にスノーモービルで走り回った跡がそこかしこに残っておりまた野伏ヶ岳の山腹にもそれらしい跡が残っている。走り回った本人は楽しかったのだろうが何とも無粋な感じがしてしまう。
和田山牧場跡の大雪原を囲む峰々

周りの風景に見とれながら雪原を進んでいく。眼前に次第に野伏ヶ岳の美しい山容が近づいてくる。やがて雪原の左手に寄って林道跡らしいところを通り小山を回り込んで雪のない時は湿原であろう窪みに出る。この窪みを渡って行くといよいよダイレクト尾根の取り付きだ。見上げると真っ直ぐな尾根が山頂まで駆け上がっている。

適当に登りやすい斜面を登ってダイレクト尾根の末端に立つ。しばらく緩やかな登りを進んで最初の急斜面手前で休憩をとりドラ焼きでエネルギー補給。尾根の左手側には小白山の端正な姿が見える。また東を望むと大日ヶ岳が朝陽に輝いている。

ダイレクト尾根より大日ヶ岳
休憩を終えスキーアイゼンを取り付けいよいよ急斜面へ。斜面にはすでに下山してきたようなスキーとスノーシューの跡がある。泊まりの方のものだろうか。

急斜面の前半は直登で進めたが途中からスキーアイゼンをしていても滑るようになり斜面をジグザグにきって登っていく。斜度がきつく転ぶとそのまま下まで滑落しそうでヒヤヒヤしながら歩を進める。視界を遮る樹木が少ないため登るに従って高度感も出てくる。

急斜面を登り切るとガイドブックなどに出ている中間点付近の目印というブナの大木がすっくと立っている。ここを過ぎるとしばらく緩やかな痩せ尾根になり、その先はまた急斜面となる。と、ここで急斜面に再びスノーモービルの跡が…。下から見たときそれらしい跡が見受けられたがまさかあんなところまでは行かないよなと思っていた。それが本当にこんなところまで来ていたとは…。しかもその跡はジャンクション付近まで続いている。ちょっとがっかりである。景色も台無しにしているが歩行をしづらくもしている。少々腹立たしくなってくる。

ちょっと気をそがれながらもまだまだ急斜面が続く。スノーモービルの跡を気にしながらジグザグに進んでいく。尾根の右手側は切り落ちたような感じでもし滑って降りてくるなら気をつけないといけないだろう。斜度は最初の急斜面よりきつく慎重に進んでいく。雪質は若干固い。滑降できるか不安になってくる。気温が上昇して雪面が柔らかくなるのを願う。

右手に正面ルンゼを見おろして小さな雪庇を越えると北東尾根とのジャンクションの上に出る。正面ルンゼの滑降はスキーヤーにとって醍醐味らしいが、所々雪の固まりが転がっており、雪崩れそうで滑降は危ないように思える。もっとも僕の腕でショートスキーではもともとここを滑ることは無理な話なのだろうが。

ジャンクション付近から山頂を望む

ジャンクションから左手に折れてピークまでの最後の登りにはいる。斜面左手側に亀裂が入っており危険を感じたのでなるべく右手右手を進んでいく。この斜面は登るに従って斜度がきつくなってくる。下を見ると何も遮るもののない雪だけの斜面がずっと続いている。雪も固く足を滑らせ滑落したらどこまでも止まりそうになさそうだ。肝を冷やす思いをしながら慎重に進んでいく。進んでいきながらどうやって降りようか心配になってくる。

斜度が緩やかになるといよいよ山頂。遮るものが何もない広い山頂だ。他には誰もいなく足跡もないので本日の一番乗りということか。尾根を登っているときは風もなく穏やかな感じだったが若干風が強い。物音はもちろん何もしない。展望は360°で眼前の白山や経ヶ岳、荒島、能郷白山、乗鞍、御嶽などなど見えないものは何もないといった大展望。すごい。しばらく見とれていたが、やがて下山のことが心配になり心細くなってくる。

十数分して後続の方が3名登ってこられた。二人は小白山まで縦走する計画らしかったがちょっと行ったところで気持ち悪い雪庇があったからといって戻ってみえ目的を薙刀に切り替え北の斜面を下っていかれた。

山頂より経ヶ岳
もうお一方はスキーを担いで登ってこられ正面ルンゼを滑っておりようと思っているとのことだった。山スキーを始められて2年ということだったが山スキーについていろいろ話を聞かせて頂いた。ますます、山スキーに興味が湧いてきた。

ビールで乾杯して食事をしているとやがて山頂は人で賑わいだした。大きな団体さんも幾つか登ってみえ広い山頂ながら所狭しと荷物を下ろす。先ほどまでの静けさとはうって変わって騒がしいぐらいになった。風はやや落ち着いてきて気温も上昇しているようだ。そろそろお暇する時間かもしれない。

ビールと焼酎を少々やって気が大きくなり下山への不安は若干薄らいでいる。それに次から次にスキーヤーも登ってくるので自分もいけそうな気になってくる。結局スキーのシールをとって滑降していくことにする。

白山をバックに

さていよいよ滑降だ。山頂からジャンクションまでがまず不安だったが正午が近づき雪質も柔らかくなりエッジが利いて快調に滑り降りる。ジャンクションからダイレクト尾根を見下ろすと、あれまっ、下る人やら登る人やらで人だらけ。参ったなあ、と思って正面ルンゼの方を見ると2,3のシュプールが残っている。その跡を見ると雪質も良さそうにみえる。ちょっと入ってみたが何とか自分でも行けるのではないかと思えてくる。もちろんここを滑り降りる分には渋滞はない。よし、ということであこがれに近かった正面ルンゼへと滑降を始めた。

斜度はかなりきついものの雪質が丁度良くエッジがうまく利きターンもきれいに決まる。幅も広いので思い切って滑れる。ショートスキーなのでストックを持たないで手でバランスを取りながら滑るのだがそれでもすごく気持ちよく滑っていける。最高の気分だ。時々立ち止まり上を振り返りここを滑ったことを実感しながら下っていく。まさかここを滑れるなんて…、静かな感激がこみ上げてくる。やった!

正面ルンゼを見下ろす
下部に至ると段々斜度が緩やかになってくる。無事正面ルンゼを滑り終えた。嘘みたいだ。たぶん条件が良かったのだろう。今日の天候に大感謝だ。

正面ルンゼを滑り終えそこからは森を抜けていって朝の大雪原に向かう。雪原は平らかなのでスキーを滑らすのに苦労する。雪原の端に着いてちょっと休憩。野伏ヶ岳の正面ルンゼを見て今あそこを滑り降りてきたのかと改めて感激した。

雪原からは林道をひたすら下っていった。本日で一番疲れたのはこの林道の下りだった。狭いし、踏み跡があって滑りにくい。ここさへ快適に進めればいうことなしだったのだが、こんなことはものの数ではないほどのすばらしさが本日の山行にはあった。

下山してみると、橋付近の駐車スペースも神社の駐車場も車で一杯だった。一台に平均3人乗ってきたとしたら100人は越えそうな感じだ。大人気の山なんだなと改めて感じた。

帰りは桧峠付近の「満天の湯」で露天風呂につかり、登ってきたばかりの野伏ヶ岳を見ながら疲れを落とした。