乗鞍岳(3025.6)


2006年4月30日 日曜日 (曇り) 単独 途中敗退 


6:50  三本滝レストハウス駐車場

:20  位ヶ原取り付き

9:30  肩ノ小屋口近辺

9:50  肩ノ小屋下(引き返し地点)

11:05 位ヶ原下端

11:18〜12:37 休憩

13:00 三本滝レストハウス駐車場


三本滝のゲレンデ
山スキーに挑戦したこの冬。最後の一滑りをと向かったのはまだ豊かな雪をたたえる乗鞍岳。

山スキーの道具をそろえたのがシーズンの後半で、まだまだ滑りたい思いがくすぶっている。それを叶えるには遅くまで雪の残る白山か乗鞍辺りに行くしかない。しかし、白山は登ることも含めて技術的にも体力的にも今の僕には難しい気がする。そこで比較的取り付きやすい乗鞍岳に向かった。

まだ日の明けない東海北陸道を飛騨清見に出て高山経由で安房峠に向かう。安房峠は冬期通行止め中。仕方がないので高い通行料を払って安房トンネルを抜けて乗鞍高原へ。

まだ早朝で人気の少ない乗鞍高原を抜けてスキー場脇を三本滝へ。車をレストハウス駐車場に停めしばらく様子をうかがう。

空模様があまり良くない。天気予報でも本日は曇り。午後からわずかに晴れるらしいが心配は日本海側を低気圧が抜けていくことだ。どんな影響が出るのだろう。

霧のような雨もぱらつく中、他の車では登山やスキーの準備を始めている。そんな様子を見てどうにかなるかと準備を始める。

準備を終えゲレンデを歩き出す頃には雨は上がっていた。空も思ったより明るく取り敢えず歩くには支障がないようだ。問題は上部に行ったときにどうなっているかだ。ガスがどこからかかっているのか。

まずはゲレンデの急斜面を登っていく。ここの急斜面は雪がついていれば大したことないだろうと踏んでいたが、ゲレンデ中腹の林道が除雪されていた。そこを避けようとしたがコース取りを間違え時間をロス。後から登ってきた何人かに追い越されてしまった。
位ヶ原取り付きの急斜面

ゲレンデ急斜面を登り終え上部に出るとそこはなだらかな台地。一呼吸おけるところだ。追い越していった方達にもここで追いつき、奥の急斜面で追い越していった。

急斜面を登り切ると森の中に広い切り開きがありそのなだらかな斜面をひたすら登っていく。これが飽きるほど長い。やがて森の向こうに位ヶ原らしき高台の縁が見えてくる。

位ヶ原へ行くにはちょっとした急斜面を登っていかなければならない。これが結構しんどそうに思えた。そこで奥の手のスキーアイゼンをとりだす。

ディアミール(山スキー用ビンディング)にスキーアイゼンを装着するのは初めて。装着自体は簡単にできたのだが装着してビックリ。歩行補助具の踵をあげた状態だとアイゼンの歯が雪面にほとんど届かない。うっそー!これじゃ意味ないじゃん!!これで凍った急斜面をどうやって登れって言うんだ。

あまりのことに呆れてしまってしばし行動に移れなかったがまだまだ先は長い。気を取り直して急斜面に取り掛かる。案の定、アイゼンをつけた効果は全く感じられずお情け程度の線を雪面に付けるのみだった。

急斜面を登り終えるとそこには大雪原が…のはずだったんだけど、雪原はガスのベールに隠されてさっぱり見えない。当然その向こうにあるはずの幾つかのピークも全くわからない。おまけに風も結構きつい。どうしようか一瞬迷うが登山者のはっきりとしたトレースがあるので取り敢えずそれを辿ってみることにした。

トレースはあるものの先行する人影は全く見えない。位ヶ原取り付きの急斜面で追い越したスキーヤーが後ろから付いてくるのがうっすらとわかるぐらい。トレースを見失ったらやばいかも知れない。

しばらく進んでいくと立ち止まっている一団があった。トレースの主達かと近寄ってみたが足下には皆スキーを履いていた。どうやらトレースの主達ではなさそうだ。で先に行ってみるとトレースは更に続いていた。

ガスに覆われた緩やかな雪原をトレースを追って歩いていると途中ガスが薄れて先行する登山パーティがみえた。どうやら2パーティあるようだ。そのうち手前のパーティはこのガスと風の中で休憩に入っている様子だ。

この休憩しているパーティはすぐに追い越した。その辺りから斜面が角度を付けはじめる。先行者のトレースはまだしっかり残っている。しかし、この風で徐々に消えていく可能性もある。その場合、このガスの中完全にホワイトアウトとなりかねない。しかし、状況ほどに怖さが沸き上がってこない。姿が見えなくても前後に人がいるという安心感からだろうか。

ガスに包まれる斜面を進むパーティ
怖さは沸き上がってこないが位ヶ原に着いた辺りから空腹感が沸き上がっている。風とガスの中でちょっと休憩してどら焼きをほおばる。そのうちに先ほど休憩していたパーティが追い越していった。

休憩を終え再びトレースを追い始める。追い越していったパーティはすぐに追い越し更に先に進んでいく。斜度は徐々に増しているようだ。風の強さも徐々に増している。それにガスの濃さも。

付けて間もないであろうトレースは強風に運ばれる雪ですでに半分ぐらい埋まっている。中には既にほとんど形をなしてないところもある。濃いガスの向こうでは時折コースの確認をするためか怒鳴る声がしている。しかしその声の主達の姿は全く確認できない。遠いのか近いのかさえもわからない。

消えかけているトレースを何とか拾って斜面を登っていく。せめて肩ノ小屋までは行きたい。しかし下山する時の不安がよぎる。視界は前後数メートル。真っ白な世界で自分の居場所を見失ったら…。

不安を抱きながらも先行者があることを頼りに進んでいく。やがて若干岩肌の見える緩やかな地形の所に出る。ここでトップであろうと思われるパーティに追いつく。

パーティは立ち止まりこの先どうするか相談しているようだ。こちらとしてはこのパーティを追い越していくことはできない。嫌らしい話だがこのパーティが動き出すまでこちらも動けない。やがて決心したようにパーティは先へ進んでいった。そしてすぐに見えなくなった。

さてどうするか。後を追うのか。ここから引き返すのか。風はここにいたってスキー板も飛ばされるんじゃないかと思うほど強くなっている。スキーズボンとゴアテックスのレインウエアにくるまれて身体は今のところ寒さを感じないが手袋とグローブカバーをした手先は若干しびれてきている。ふと気付くと吹雪いているようだ。なんだかやばいなあ。

やはりここで引き返すことにする。肩ノ小屋まであとわずかのような気もするがこれ以上先が無事で済む保証はない。

スキーアイゼンをはずし、シールは付けたままでボーゲンで滑り降りてみる。視界がないので斜度がどれぐらいあって雪面がどんな状態かわからない中で全くバランス感覚が働かずすぐにこける。2度3度試してみたが平衡感覚が全くない。これではまともに滑ることができないと諦め横滑りしていくことにする。

シールを付けた横滑りは全然滑って行かなくて半分ぐらいは横歩きという感じだった。しかし、滑りすぎてこけるよりはましだろう。さっき辿ってきたトレースを辿り返して行きたいが既にほとんど埋まっている状態で見失ってしまう。どうしようと思ったがとにかく降りるしかない。地形に不案内な山でガスで視界がなくトレースもない状態で一瞬「遭難」という言葉が浮かんだ。それを振り払うようにして下へ下へとにかく降りる。やがて偶然、薄いトレースを見つけた。助かった。これで降りられる。

少し姿を見せた位ヶ原

上部からは先ほどのパーティらしき声がしてくる。相変わらずその姿は見えないがどうやら彼らも諦めて引き返してきたようだ。やはりあそこで引き返したのは正解だった。

斜度が緩くなってくると視界もわずかながら広がってくる。その辺りからはスキーを平行にして何とか滑り出す。途中からはスキーの跡もあったのでそれを追ってみたが相変わらず遠くは見えないのでどこへ向かって滑っているのかわからない。

やがて視界の中に看板らしきものが現れた。近づいてみると「2600m大雪渓」と書いてある。2600m付近なのかあ、と思ったがそれがどの辺りのことなのかわからない。と思っているとガスが少し晴れて位ヶ原の雪原が視界の中に広がった。それでやっと自分の位置と向かうべき方向がわかった。

それからは、ガスは濃さを増したり薄くなったりしたが視界はかなり広い範囲で得られるようになった。シールもはずしてなだらかな雪原を快適に滑っていく。やっと山スキーに来たという感じになった。

雪質は朝と違って溶けており若干重い。位ヶ原は良かったが急斜面では板をとられこけてしまった。下部に行くに従って滑降の跡が多く残り雪面はがたがたになっていてそれも滑りにくくしている。

休憩中に晴れ間が…

途中でやっとこさ落ち着ける場所を見つけ休憩にはいる。見ると空は徐々に晴れてきているようだ。この分だと上部も晴れるかも知れない。事実、下山後山頂を見ると晴れており、間近には見ることの叶わなかった雪面を見せていた。残念だったがこういうことがあるのも山歩きである。何時かリベンジをしなければという目標ができたことを喜びとしよう。

下山後は乗鞍高原休暇村の温泉で疲れを落とす。ここは内外装がきれいで入泉料も500円とお値打ちだとおもうが貸し切り状態だった。時間帯のせいだろうか。おかげでのんびり気兼ねなく疲れが落とせた。