高天神(919)


2006年6月4日 日曜日 (曇り時々晴れ) 単独  


6:47  登山口

:02  広い尾根

8:35  四等三角点(852.4m東長谷)

9:32  高天神

10:37〜12:42 休憩

13:20 林道終点

13:45
 鉄塔

14:25 野原谷橋

15:07 駐車場所


「岐阜の山旅 100コース」の上巻に載っていて前から気になっていた揖斐は春日の「高天神」に向かった。高天神へ登るには伊吹山北尾根と長谷川を挟んで東側に並ぶ尾根に川合集落から取り付く。上部は薮こぎになるようで気合いの入った山歩きになりそうだ。

粕川に架かる木製橋
ほどほどの天気の中、揖斐川町春日に向かった。登山口のある川合集落はまだ朝早いためかあまり人影はなし。「さざれ石公園」に向かう道に入り、少し行くと防火漕脇に河原へ下りていく道がある。そこが登山口で手前には左手に神社、右手に小学校があり、その間の路上に地元の方々の車が停められている。そこに割り込ませてもらって交通の邪魔にならないように駐車。準備をしていざ出発。

登山口から河原に下るとすぐに木製の橋がかかっている。そこを渡って道沿いに進むと茶畑にで、その中を通って上にでると猪よけの柵をした茶畑がある。本当はそこを越えて茶畑の裏の竹藪にでたいのだが柵を越えるのははばかられる。かといって柵を回り込むのも草むらが鬱陶しい。よく見れば裏手に植林が見える。元に戻って反対側から回り込めば何とかなりそうだ。そう思い反対に回って踏み跡のないところを踏んで回り込むと思っていたところにでた。後は急な山腹をわずかに登って尾根に取り付く。

尾根には深い溝がずっと続いている。かつては道としてよく利用されていた名残なのかも知れない。しかし、今は落ち葉に埋もれ、また倒木もあったりして歩きにくい。だからルート的にはこの溝を辿っていけばいいのだが実際に歩くのはほとんどその脇の斜面ということになる。

植林帯の結構な急登が続く。まだ朝早いのだが植林帯で風が吹かないせいかかなり暑い。すぐに汗が噴き出してくる。時折、息を整えるために足を止める。相変わらず体力ないなあ、と思う。続く急斜面をえっこらえっこらと上がっていく。そのうち、東隣の尾根が見えるようになってくる。

下りは東隣の尾根から降りられないかなあ、と様子を伺ってみる。ピストンでは何だかつまらない。上部で稜線沿いに通っている林道を辿れば隣の尾根には用意に辿り着けるはずだ。地形図では尾根の下部がかなりの急斜面になっているがそこは植林帯だから何とかなるだろう。中腹も樹木の植生がこちらと似ているから問題なさそうな感じである。気持ちがいってみる方向に傾いていく。

急登は続く。暑い。実は、今回は装備が厳重だ。というのは、ここのところ「ヒル出没!」という話題を聞くので、これはいかん、ヒル対策をしなければと足下をスパッツ(しかもロングスパッツ)で固め、その中は靴下を二重に。これでヒル対策はばっちり。しかし、これが暑い(−−;しかも、上は薮対策にと長袖、そして昨年までは山で使ったことのなかった軍手までポケットに忍び込ませている。これらの相乗効果で暑い、暑い。

登り始めてすぐこのヒル対策は無駄だと分かった。ここのところのこの上天気で地面は乾いている。ヒルにしてみれば最悪の天気だ。彼らにしてみれば頭をもたげて吸い付こうなんて元気はなかったのである。冷静に考えれば登る前に分かることだった。

広い尾根の気持ちのいい森
ヒル対策の無駄に気付いても今更脱ぐのも面倒でそのまま歩き続ける。やがて植林帯の急斜面を抜け広い緩やかな斜面にでる。ここからは、植林帯はなくなり、かわりに二次林の森へと変わる。

先ほどまでとは打って変わってとても気持ちのいいところだ。踏み跡は薄く、折れた枝もそのままで少し荒々しい。特に目を惹く様な木々はないが、素敵な明るい森である。ここは、今回のルート上で一番よいところだった。ここまで来てここを楽しんで帰ってもいいくらいだ。新緑の森で何時までも木々と語り合いたい気分になるが貧乏性が先を急かす。

東長谷の三角点
気持ちのいい広い尾根を過ぎると尾根が狭くなり樹木も低いものが多くなる。低い枝が行く手を邪魔するがそれほど気にはならない。ほどなく再び尾根が広くなると四等三角点(点名 東長谷)に出る。

ここの三角点の石標は表面がやけにきれいだ。なんでだろう?人がわざわざ洗いに来るわけではないし、まさか仙人が…。などと思いながらわずかに休憩して次は高天神を目指して歩き出す。

三角点からちょっと行った左手側に池がある。この池はガイドにも載っていたのだがこれほどはっきりとした池だとは思わなかった。なかなかの雰囲気でちょっと得した気分である。水面には何か蠢くものが…。池の上の枝を見るとモリアオガエルの産み付けた泡がある。蠢いているのはそこから池に落ちたオタマジャクシ達である。すごい数だ。いったいあの中からどれだけが大人になるのやら。

三角点近くの池
池を過ぎると尾根は細くなる。ガイドによればここから薮こぎということになるのだが…。進めど進めど薮らしい薮は現れない。木々が低くて枝が邪魔するが対して歩くに支障はない。時折シャクナゲの幼木がみられ、これらが立派に成長した暁には大変な薮となりそうだが今は明るくどちらかというと歩きやすい尾根だ。せっかく用意した装備と気合いがちょっと空回りだ。

緩いアップダウンを繰り返し、左手山腹が植林となってくるとまもなく林道が近くなる。ルート上にずっとあった古い目印は林道の方へ下りている。しかし、林道を歩くのも芸がないのでそのまま尾根を進むと植林帯に入る。そこから二つ目のピークで左に90度折れて更に植林帯の中の尾根を進んでいき、最後は若干の急斜面を登れば高天神山頂。

高天神山頂より伊吹山
高天神山頂は、ガイドでは南側は切り開かれて展望が得られると書いてあったが何年前のことやら。今は灌木が伸び立っていないと展望は得られない。見えるは
ずの伊吹山も工夫してのぞき込まないと見えない。その伊吹山は山頂の辺りに雲がかかっている。山頂自体は狭い。しかも、後ろが植林になっており何だか落ち着かない。大休止するにはいまいちだなあと思い、林道まで下りてみることにした。

どのみち林道を辿って登ってきた尾根とは反対側へ行くつもりにしているのでここでおりてその途中で適当に見晴らしのよいところを見つけて休憩しても無駄とはならない。林道に下りてみると、この林道はバリバリの現役のようで舗装こそされていないがよく整備されている。が、やはり林道歩きというものはつまらない。早くいいところないかなあと思いながら歩くがこういうときに限ってそういった都合のいいところはない。

どんどん進んで知らぬ間に高天神とは谷を挟んで反対側に来ていた。道路脇には見慣れた中電の鉄塔巡視路の標識が立っている。その辺りから東側の谷の方をのぞき込んでみると送電線が通っており支尾根には鉄塔が見える。この様子からすると林道終点からも鉄塔巡視路があるかもしれない。もし、そうであらばそれを辿って下ることにしよう。早くも手抜きの算段である。

林道脇にカモシカの子ども
更に林道を歩いていると何やら前方より視線を感じる。なんだ!と思ってみると、林道脇に立ち止まりこちらを振り向き見ているのはカモシカのおこちゃまだった。じっと見ているのでカメラを取り出しゆっくりと撮影した。それでも逃げようとしない。しかし、少し近づいていくとものすごい勢いで森の中へ逃げていった。

カモシカのおこちゃまと会ったところからしばらく行くとやっと左手側に見晴らしの良い場所があった。そこからは登ってきた尾根と高天神が正面に見える。先ほどから早くプシュッ!がしたかったので陽の当たらないところに荷物を下ろし早速プシュッ!うまい!これはやまられません!

落ち着いてよく見るとこの切り開きは大木を切り倒してできた物のようでなんだか切り倒された大木に申し訳なくなってくる。しかし、休憩もしたい。ごめんなさい、休ませてくださいねと心中でわびた。

ビールで気持ちよくなり寝転がってみると日差しを遮ってくれている木も91大木だと分かった。樅だろうか、枝を大きく張りその幹は太い。木肌に明らかに人工のものである古い傷が付いている。おそらく他の大木が切り倒された時に付けられたものなのだろうか。そう思うとこの木は世の中を達観し冷ややかに世間を見下ろしているようにも見える。

休憩地より高天神を見る
大木は向かいの尾根の植林帯の中にも所々立っている。周りの植林と明らかにスケールが違うためにじっと見ていると遠近感がおかしくなるほどだ。その一本一本が何かを秘めて黙して語らずじっと時の移りゆくのを見つめている山の精ようだ。

向かいの尾根の向こうには伊吹山が頭を少しだけ覗かせている。双眼鏡で見てみると人影が幾つか確認できた。ここから分かるぐらいだから伊吹山山頂は人で込み合っているのだろう。反対にこちらは全く人の気配がない。のんびりとした時間を過ごせる。

休憩を終えて、林道を進んでいく。途中で、オフロードバイクに乗ったお兄さんが抜いていった。本日山中で出会った唯一の人だった。この道が行き止まりだと知って入ってきたのだろうか。

途中、林道右手にテープの目印があった。そこから入っていけばどうやら887.8mの三角点があるらしい。試しに入ってみるとはたして三角点があった。高天神山頂より気持ちのよいところであった。

三角点から下って再び林道に出る。進んでいくと左手に894mピークが現れる。見た感じ二次林の気持ちよさそうなピークだがなんとなく立ち寄るのが面倒でそのまま林道を進み分岐点に出る。分岐点を右にとって進むと徐々に下っていってやがて林道終点となる。思っていたとおり鉄塔巡視路の標識が立っている。右手側に進む標識と左手側に進む標識があるが、下山するのだったらおそらく左手だろうとそちらに進んでいく。

巡視路はおきまりのプラスチック製の階段が埋められている。それを辿っていくと巡視路は巡視路らしからぬ急斜面を急下降していく。フィックスロープもしてある。こんな巡視路もあるんだなと感心した。しかも、プラスチック製の階段も細かく埋められておりよくここまでやったなあと思う。

鉄塔より鎗ヶ先
巡視路を順調に進んでいき鉄塔に出る。ここからは粕川が見下ろせ、本日で一番の高度感のある場所だ。左手には鎗ヶ先が意外と間近に見える。しかし、日差しが暑くて長居する気にならずすぐ下の植林帯にはいる。

植林帯にも巡視路は続いている。時折倒木があって越えるのにちょっと難儀するが道は明確で見失うことはない。やがて沢に出て一息つく。流れをすくい上げて顔を洗うと気持ちいい!生き返った気分だ。

沢を越えてからは右山でほぼ山腹をトラバースするように進んでいく。途中ガレのような足場の不安定なところもあるが問題なく進んでやがて茶畑に出る。さすがに西濃地方ではお茶で有名な春日である。入るのも茶畑なら出るのも茶畑だ。茶畑を真ん中まで進んで左手に下りていくと何の施設か脇に鉄塔の立つ建物のある広場に出る。そこから林道をわずかに下り粕川を渡る橋に出て対岸の車道に渡る。そこら辺りで犬と散歩していた地元のおじさんと出会い話しながら歩く。

「この山は何もなかっただろう」(確かになかったといえば何もないけど…)「このあたりだったら、貝月山とか夜叉ヶ池ぐらいしかないわな」(それもある意味よく分かります)などと、聞きながら返事のしようもなくニコニコしていた。でも、一言いいたかった。結構充実した山歩きでした!と。

後は川合の集落まで車道をてくてく歩いていく。時折尾根を眺めたり、粕川の流れをのぞき込んだりして車に着くまでそれほど退屈はしなかった。