能谷左俣


2008年8月14日(木) 晴れ  能谷左俣  奥美濃  本巣市根尾下大須  単独  沢歩き


7:00 「憩いの家」 → 9:00 二俣 → 10:45 30m大滝 →
12:05〜12:40 休憩 → 13:30〜45 稜線 →(南西尾根経由)→ 16:05 「憩いの家」


能谷は2万5千分の1地形図「下大須」の「下大須」と書かれたところの谷だ。
昨年も訪れた僕の故郷の谷。
昨年は標高580m付近の二俣を右にとって谷を詰めた。
その時、左俣に大滝を発見した。
それ以来その滝の事が気になっていた



下大須下村にある「憩いの家」から能谷へ下る。
かつての生活通路は苔むし草に覆われている。



コンクリート製の橋の袂から沢に下りる
沢の水はかなり細い。
この状態なら昨年登れなかった滝が登れるかもしれない。



堰堤を右手側から越すと水が涸れているが直ぐに戻る。
薄暗い植林に囲まれた沢はかつて釣りにきて熊を見た事がある。
時折奇声をあげ鈴も鳴らしながら進んでいく。



谷の両側が立ってくるといよいよ滝登り第一ステージ。
最初の多段10mは下段をパスして中段から登る。
昨年はこれさへできなかった。
その後3〜5mを登って最後にこのステージのボスキャラ登場。
8m斜瀑の水流は昨年に比べかなり弱い。
これは行けるかも、と取り付くが流石にボスキャラ、易々とは登らせてくれない。
2/3程度まで無理矢理登ったがその上にホールドが見あたらない。
なんとか指を引っかけて強引に体を持ち上げようとしたその時…
左足が滑りそのまま足から滝壺へ。
今年初めての潜水だ。



滝壺からあがって全身チェック。
傷はないし、骨も大丈夫そう。
左足の膝付近を打撲しただけですんだようだ。
斜瀑だったのと滝壺が深かったのと岩肌がぬめっていたのがよかった。



結果的に数m滑落したわけだが何故か気分は爽快だった。
もう一回チャレンジするかとも思ったが先の長さを考えてやめた。
たぶんここは上からロープを出してもらわないとクリアできないのだろう。



ボスキャラを巻くと上は巨岩帯。
この巨岩帯を越えるのもなかなか骨が折れる。



巨岩帯を越えて広い川原に出る。
ここが二俣だ。
ここを左に進むとすぐに20mほどの斜瀑。



これが昨年見つけて気になっていた滝だ。
なんとか登れるんじゃないかと思っていたが
こうして目の前にするととても無理だとわかる。



少し休憩して右手の小尾根に取り付く。
かなりの急斜面で木や根っこを掴みながらよじ登っていく。
沢への下りも慎重に細引きを出して下りていく。



降り立った沢はきれいな滑。
そこから滝の落ち口の方をのぞくと、…登らなくて正解だった。



滑はすぐに岩に埋もれていく。
左右は岩肌が切り立つ。



すぐにまた2mばかりの滝が現れる。
その上はまた滑になっているようだ。
ちょっと登りづらそうな滝だがなんとか右手から登る。
ここらから滝登り第2ステージ。



滝上は両岸スラブ状になった滑だ。
まるで違う地域へ来ている感じだ。
岩が崩れてきているのはご愛嬌。
自分の故郷にこういう谷が存在するとは思わなかった。



感激に浸っていると目の前に12mスラブ状の斜瀑が現れる。
げっ、これは無理だ、と思わず叫んだ。
が近づくとなんとか左手の草を掴みながら登れる気がしてきた。
で取り掛かる。
上部でちょっと苦労したがなんとかクリア。
胸をなで下ろした。



その後少しゴーロ状があって階段状の30m滝。
階段状といってもラインが斜めなのでいやらしい。
でそちらを嫌ってこれも左手の草を掴みながらよじ登る。
しかしこちらも上部はヒヤヒヤものだった。



30mの上に出ると左岸側の木にロープが巻き付けてあった。
誰かが下りのビレーに使ったのだろうか。



再びゴーロ状がわずかに続くと向こうに巨大な岩壁が見える。
「屏風岩」とでも「衝立岩」とでも言おうか。
地形図ではその場所にあたるところに崖の印も岩の印もない。
どうやら等高線の密度でこの壁を表しているようだ。
だが実物は等高線の密度以上の迫力を感じる。



壁側に近づいていくと赤肌の美しい滑が現れる。
しかしもう滑ぐらいではあまり感激できなくなっている。
そこから少しよじ登るとまた崖のような10mほどの滝が。
第3ステージである。



この滝は岩壁の左側の低みを巻いて下りてきているようだ。
取りあえず直登は無理。
数m上のバンドが使えそうに見えるので右側の灌木帯をよじ登ってみる。
しかし上からバンドを観察するとどうやらやばそうな雰囲気。
一挙に岩壁のすぐ下まで登る。



真下から見る岩壁は一段と迫力がありめまいがしそうだ。
真下には細かい岩屑がたまりこれが道のようになっている。
これを左手に進んでいき沢に下りる。
これでさっきの10m滝は巻けたが次の滝が待っていた。



7m程か、ほぼ垂直。
直登は無理。
滝の左側の壁がなんとか登れそうだ。
少ないホールドを何とか探して登る。
最後は草を掴んで体を強引に持ち上げクリア。
やれやれ。



滝上は緩やかな沢。
徐々に樹木も覆い被さってきていよいよ源流といった感じ。
もう流石に滝はないだろう。
と高をくくっていたところにまた岩肌が現れる。
これは、と思っていると8mほどの滑滝。
あきさせない沢だ。



ぬめる滑滝を慎重に登ったところは休憩にもってこいのところ。
開けていて眺めがよい上に両岩がスラブ状で背もたれに調度いい。
でここで休憩。
カンパ〜イ!
あぁ楽しい!気持ちいい!天国にいるみたい!
ひょっとしてどこかの滝で滑落して本当に天国にいるのでは?



休憩後は滝の左側の小尾根を乗り越して左手の沢を登る。
このまま登っても良いが僕のあてにならない勘が左を指す。



沢床は相変わらず岩肌でかなり上まで続いている。
ようやく沢筋がとぎれたところで岩屑の山肌となる。
急斜面の灌木の薮を漕いで稜線へ。
出たところは予定通り標高点1086と1165の間のこんもりしたピーク。
名前はない。



稜線上は桧が混じる樹林帯で下草はなく歩きやすそうだ。
北側の1182.3三角点位までは行こうかと思っていたが
ここまでちょっと時間がかかりすぎた。
下山が遅いと大騒ぎになる可能性があるので(知り合いのおじさんに姿を見られている)
本日はここまで。



下山は予定通りピークから南西へ延びる尾根を下る。
この辺りでは当たり前のことだが下りはじめは笹の大激藪。
登りにこれだったら大変だ。
時折見晴らしの良いところに出ては尾根の先を確認しつつ下る。



一時間ちょっと薮をこいで次第に薮が薄くなってくるとブナ混じりの樹林帯が現れる。
心が洗われる感じだ。
ホッとしているとすぐに植林帯がとってかわる。



わかりにくい尾根の分岐に注意しながらなんとか地形図上の「下大須」と書かれたところに下る。
下からは NEOキャンプ場に遊びに来ている子ども達の声がする。
楽しい夏の想い出が彼らの胸に刻まれていることだろう。
僕の胸にも楽しい夏の想い出が刻まれた一日だった。