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長編小説 デュオの仮面騎士
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文:カメ仙人 |
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ダンからの書状を読み終えた後、エルドラン将軍は静かに二十年前に現れた天人フィルの話を語った。デュオ革命の時、力を貸してくれた二人、ドルベ爺とダンはデスペラードの重臣であったという事実は、フェリオに少なくない衝撃を与えた。だが、将軍の次の言葉は、少年を完全に打ちのめしてしまった。
「ダンの書状によれば、アルディオンの神子、ライヤはミリー王女の忘れ形見に間違いないだろうと書かれておった」
「フェリオ、驚いているようだな」 「書状には、君のことも書いてあったよ。ドルベは最初、君をミリー様の忘れ形見だと思い込んでいたらしい。君のそのエメラルド色の瞳のせいだ。だが、ドルベの死後、ライヤ様と謁見したダンは、彼女があまりにもミリー様に似ていることに驚愕し、彼女の身元を密かに調査した。そして、間違いなくミリー様の忘れ形見だと確信したらしい。どうやら、ライヤ様とカリム様はうり二つのようだ。それに、ライヤ様と、君は深い縁(えにし)で結ばれているようだ」
「はあ……?」 「とにかく、我が世界は未曾有の危機を迎えていることは理解した。強大な敵を倒すため、デュオが一致団結しなければならないことも判る。だが、我がデスペラードは強大な軍を持つ大国だ。他の国の力など必要とはしない。敵の正体が判った以上、獣神といえど恐るるには及ばぬ。獣神は我らが倒す。そして、デュオも吾らが守る。そうでございますな、カリム王子。いえ、国王陛下が退位を表明なされた今、カリム様が国王でございました。国王陛下、ご決断を」 真っ直ぐに見つめる将軍の目を、カリムは力強い目線で見返す。これが国王としての初めての仕事、この答えをどう出すかで王としての器量が知れる。エルドランも、他の将軍たちも、新王の瞳をジッと見つめていた。
「エルドランの言う通りだ。我がデスペラードはデュオ最強の軍を持っている」
「慌てるな、フェリオ。私の言葉はまだ終わってはいない」
「だが、敵は我々の想像以上の力を持っている。デスペラード軍の総力で立ち向かえば、獣神は倒せるに違いない。しかし、敵は奴だけではない。そうだな、フェリオ」
「ハッキリ言って、グレン・バズトール、獣神ゴーラと名乗っている男は、強敵です。でも、彼の所属する木星麻薬シンジケートの中で最強というわけではありません。もっと強い者もいます。それに、彼程度の者を数十人、いえ数百人揃えた軍隊も存在していると考えられます」
「でも、心配はいらないわ。そんな大軍をデュオに潜入はさせない。銀河パトロールと星間警察が誇りをかけて阻止します。でも、一人、二人の工作員の潜入は、もしかしたら見逃してしまうかも知れない」
「月神シャラ、我らに獣神を倒すことはできるだろうか?」
「獣神ゴーラ、いえグレン・バズトールは決して不死身の化け物ではないわ。デュオ人の武器では傷つけることさえできなかったかも知れないけれど、地球の武器ならば傷つけることも、倒すこともできます」
「フェリオ、ソードを見せて上げて」
「そのソードは如何なる物でも切り裂くことができます。例え、あなたがた獣神と呼ぶ、あの化け物も、この剣を使えば倒せるでしょう」
「あれさえあれば、獣神を倒せるぞ!」
「光の剣ならば、我がデスペラードにも存在する!」
「月神、これを見てください!」
「まあ!」
「天人フィルが先国王カルロ二世に献上した剣です。獣神が現れたと聞いた時、これならばと思い、宝物殿から持ち出したのだが……残念ながら使う機会がなかった……もしかしたら、その少年の持っている剣と同じではないかと?」
「デスペラードに光の剣があると判った以上、他国と同盟を求める必要はなくなった。頼りない弱国と同盟を結び、足を取られるぐらいならば、我が国一国で敵に立ち向かった方が勝算が高くなるのではありませぬか、陛下」
「強国デスペラードが他国を当てにするなど、誇りが許さぬ。どのような敵であろうと、自分たちの敵は、自分たちで倒す。それが戦神ディーンの末裔と言われる、デスペラード騎士の誇りだ。そうであろう、皆の者!」
「バルドー、よくもぬけぬけと、そのようなことを言えたな。獣神に国を乗っ取られた途端、当時、王子であった国王陛下に平然と剣を向けておきながら、今度は追従か? 全く、誇り高いことだな」
第一章 第二十六話 二人の将軍! ---了---
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近衛将軍と竜騎将軍、デスペラードを支える二将軍は互いの剣を抜き放ち、凄まじい気迫でにらみ合っていた。
「止めぬか!二人とも、お客人の目の前で、みっともない真似をするな!」
「今がどのような時か判っておるのか?この愚か者共!今は、獣神との決戦を目前にひかえておるのだ。味方同士で争っていてどうする!」 怒りに目をつり上げた新国王の平手が二人の将軍の頬を襲う。ピシャッという音は、シーンと静まり返った室内に鳴り響いた。呆然と立ちつくす二人を残し、カリムは己の玉座へと戻って行く。
「過去の怨念は忘れるのだ。私も、忘れる」 思わず叫んだのは、バルドーであった。前国王の命令であったとはいえ、命を狙った張本人をどう処分するのだろうと、心中穏やかではなかったバルドーだ。まさか、今の言葉は、自分を許すという意味で発せられたのか?だが、そのようなこと考えるのは甘すぎる期待だ。きっと、一件が決着すれば、新国王は自分を処分するに違いない。
「陛下、今の言葉は如何なる意味でございます?まさか、陛下の命を狙った、この者を許すとでも言われるのか?!」
「その通りだ。近衛将軍バルドーは、父祖の時代からの忠義の者だ。私の命を狙ったのも、前国王、我が父の命じたことだ。バルドーに罪はない。罪があるとすれば、父に不信感を持たせてしまった私だ。どうする、私を裁くか?」
「私も、陛下に忠誠の剣を捧げます」
「皆の者、全員が私に忠誠を誓うと申すのだな?」
「では、国王としての最初の命令を伝える」
「我がデスペラードは、恐るべき異星の敵から惑星デュオを守るため、デュオのあらゆる国と同盟を結ぶ」
「月神シャラ、そしてデュオの青い虹、これからもご協力をお願いします」
「カリム、あなたは良い臣をお持ちですわね」
「はい、私にはもったいないほどの、頼もしい兵たちです。彼らは一騎当千の猛者ばかり。獣神との戦いが本当に楽しみです」
「違うわよ。私の言ったのは、エルドラン将軍のこと」
「うふふ、それが判っているのなら、あなたは立派な国王陛下ですわ」
「ねえ、何がどうだって言うんだよ?オレにはサッパリわかんないよ」
「フェリオ、どうして、兵たちはああも簡単にカリムの下した命令に逆らわなかったと思う?」
「えっ、だって、ライヤは女の子だよ。戦争のことなんて判るはずないよ」
「芝居?それって、もしかして近衛将軍に喧嘩を売ったこと? でも、どうして?」
「私は、バルドーを処分するつもりはなかった。あれも、忠実なデスペラードの将だ。ただ、考えが足りぬ。獣神などにデスペラードを支配されればどうなるのか、少し考えれば判るはずだ。しかし、彼の忠誠心はデスペラード国王にあった。国王が断じたことを何の疑問も持たず、盲従してしまう。それが真の忠誠心だと思い込んでいる。それを悪だと決めつけることはできぬ。彼はそうゆう風に育てられた騎士なのだから」 思わず口走ったフェリオに、カリムは苦笑した。もしも、エルドランに師事していなければ、カリムもバルドーと同じように考えていたはずだ。だが、教育係として選ばれたエルドランの真っ先に教えたのは、自分の頭で考えることだった。自分の頭で善悪を判断する。それは簡単に見えて、難しいことだった。剣の練習が辛くて、休みたいと言った時にも、エルドランは自由にすればいいと言った。だが、もしも剣の鍛錬を怠り、まともに使いこなせない大人となった時、どうやって自分の身を守るつもりかと問われた。
「大丈夫だよ、エルドランが守ってくれるもの。そうだろう?」
「もしも、私がお傍におれば、エルドラン、一命をかけて王子様をお助けいたします。しかし、エルドランは若くはございませぬ。必ず、王子様よりも先に死にます。その時は如何になさります?」
「判った」 「近衛将軍ならば、それでよい。だが、国王はそうはいかぬ。王の言動一つで、国の運命が変わる。私の父のやったことが、尤もよい例だ。目の前の危険を忌避するために、獣神に帰依してしまった。それは、明らかな誤りだっ。人間ならば、死しても守らなくてはならない大儀がある。それは人は決して悪魔に魂を売ってはならないということだ。だが、父は、それをやってしまった。そして、それに気づいていたにも関わらず、バルドーは諌めもせず、盲従してしまった。それは、彼が心を持たぬ、根っからの軍人だったからだ。それを責めることはできぬ。ある意味、国王は、そんな家臣を重宝しているからだ。
何も考えず、戦ってくれる兵ほど扱い易い存在はない。それが判っているから、そんな風にあるようにと兵を扱ってきた。それが、本来の軍人の姿であるかのように教育してきたとも言える。だから、彼は間違っていない」
「私が何故、お前を許すと公言したのか聞きたくて、そこに隠れていたのだろう?今のが答えだ。父の時代の時は、今までの近衛将軍で良い。しかし、私の時代になったからには、変わってもらわなくてはならない。それだけだ!」
「判ったなら、行け!獣神との戦いは目の前だ。しっかりと戦功を上げよ!」
「初めから気づいていたの?」
「ふふ、途中からだ。だから、不自然ではないように、話を変えた」 「エルドランがバルドーの古傷を抉るようなことを言った時、私は戸惑った。竜騎将軍は、決して他人を誹謗中傷するような男ではないし、過去の過ちをいつまでもネチネチと持ち出していびるような陰険な人間でもない。だが、衆人環視の中で、それをやった。もちろん、バルドーは挑発され、抜刀寸前まで行った。何故、今このような時に問題を起こす?私は思わずエルドランを見た。が、その目は曇ってはいなかった。彼はやるべきことをやっている。そんな目をしていた。だから、考えた。エルドランがこのような行動を取るには、きっと何か理由があるに違いない。それは何か?今、二人が問題にしているのは、かつてバルドーが前王の命令で私を殺そうとしたこと。そして、バルドーの反応を見る限り、それをかなり気に病んでいるようだ。だから、つい何も考えることなく、私の言葉に対して追従を述べ立てたのだ。なんとか、あの事件から私の目を反らせたい。そう思っているところに、エルドランの痛烈な皮肉だ。きっとかなり焦ったに違いない。そして、激しく憎んだ。結局、エルドランの判断が正しかった。だから、これからはエルドランが王の側近として重用されるだろう。そうすれば、自分の立場はなくなると思ったはずだ」 カリムがホーッとため息をつく。バルドーもエルドラんも大切なデスペラードの将軍だ。どちらを失っても、痛手は大きい。もちろん、どちらを選ぶと言われたら、答えは決まってはいる。しかし、バルドーとて、失うには惜しい将軍なのだ。それを失わないためにはあれしかなかった。 「そうか!近衛将軍はエルドランに嫉妬していたんだ!もう自分はデスペラードに必要ない人間だって。それに、カリムの復讐も怖かった。だから、内心ビクビクしてた。でも、カリムはバルドーとエルドランを公平に叱った。そして、過去の罪は問わないと公言した。もしも、カリムがエルドラン将軍を贔屓にしていたのならば、バルドーだけを叱り、エルドランを庇っていたはずだよ。でも、それをしなかった。きっと、バルドーは自分の嫉妬が理由のないものだって気づいたはず。そして、何よりも気に病んでいた、カリムの復讐は杞憂に過ぎなかったってことに気づく。そうなれば、バルドーは安心してカリムの下で仕えることができる。それに、バルドーが許されるの なら、彼に手を貸した将軍たちも許されるはずだ。だから全員が安心して剣を捧げたんだ。凄いよ、たったあれだけで、軍を掌握してしまった。でも、いつの間にエルドラン将軍と話し合ったんだよ?そんな暇はなかったと思うけど……?」
「エルドランとは何も話し合ってなどいない。私も又、エルドランに試されたのだ」
第一章 第二十七話 王の試練! ---了---
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本当に目まぐるしい一日であった。出奔していたカリム王子と竜騎将軍の帰還。そして、デスペラード王宮を恐怖させていた獣神の下僕である獣人と不死のグリズドー退治。目まぐるしい動乱の最後は、デスロ三世の退位宣言であった。カリムを玉座に迎え、新デスペラードは動き出した。だが、そんな王家のいざこざなど無関係な門番兵士は、大禍時を迎え、小さなあくびをこらえていた。王が誰であろうと、下級兵士にはまるで関係がない。ただ、あの獣神ゴーラに従わなくてよくなったことだけは、喜ばしいことだと感じていた。
「なあ、相棒!」
「ばっかだなあ、そん時は、逃げればいいんじゃねえか! 何もオレたち下級兵士が命かける必要はンねえんだ」 門番兵士たちは、互いの顔を見て、ヘラヘラと笑った。王や将軍、騎士となると、誇りがどうのというしがらみで縛られている。だが、下級兵士にはそんなものは存在しない。ただ、給金にみあった働きをすればいいだけなのだ。なんと気楽なことだ。
「うん、あれは何だ?」
「うわーっ! 獣神だ!」
「立て、我が操り人形共! そして、我が軍団を奥宮へと導け!」
「何者だ?」 訓練された騎士ではなく、ろくに剣の鍛錬もなされていない下級兵士では、目の前に現れた恐るべき悪魔に腰を抜かし、逃げまどうような醜態を曝したとしてもしかたのないことであろう。しかし、無駄な戦いを挑まず、直ちに逃げ出した者は、賢明であった。彼らは、己の上官である騎士、将軍に直ちに注進に走った。その報告は、数分を待たず、新国王にも伝えられた。やっと、気の重い、将軍たちとの会議を終えて、くつろごうとしていたカリムの表情が一気に引き締まる。
「早い、我々がデスペラードに帰還して半日も経たないというのに、もう引き返してきたとは……」 獣神に率いられた竜騎の群を阻もうとデスペラード精鋭の近衛隊とエルドラン率いる竜騎隊が直ちに前後から押し寄せてきた。どちらも、一、二を争う生え抜きの猛者揃いの騎士ばかりである、圧倒的な剣捌きで敵を薙ぎ払おうとした。敵の動きは愚鈍で、まるで手応えがない。剣で払い、突き、切り倒す。だが、暫く戦う間に、奇妙なことに気づいた。いくら敵を傷つけても、相手は倒れることがないのだ。兜を割り、頭蓋を失っても、敵は向かってくる。鎧を貫き、心臓串刺しにしても、まだ剣が襲ってくる。 それは彼らが騎乗しているエルフォンでも同じであった。騎士がだめならば、その竜を討つ。そうして、矢で巨大な竜の足を射ても、何も感じないかのごとく、突き進んでくるのだ。幾本もの矢を全身にうけ、槍で心臓を貫かれているはずであるにも関わらず、ズンズンと前進してくる敵竜騎の群。デスペラードの竜騎士たちの胸に不安が沸き出してきた。もしかしたら、あの不死身と化したグリズドーと同じように、彼らも獣神の魔法によって不死身になっているのではないかと。
「火矢だ! 火矢で焼き払え!」 「なんて奴らだ!」 口惜しげにエルドランが唇を噛む。獣神だけでも手強い敵なのにこの竜騎士たちの不気味さはどうだ。斬っても、突いても、全く倒れない。首を切り落としてさえ、動きを止めることができないのだ。
「エルドラン、足だ! 足を切り落としてしまえば、いくら奴らが不死身であろうと動けぬはずだ!」
「よしっ、竜騎隊、奴らの足を狙え! 突き刺すだけではだめだ! 切り払うのだ!」 獣神は、死人を操り、動かしていたのだ。騎士たちの顔に、明らかな嫌悪が浮かぶ。だが、敵の正体を知ると、益々、嫌悪感が深まった。敵の全てが獣神に率いられてカナンへ出兵していった騎士たちであったのだ。それは予想すべきことであった。だが、それを目の当たりにすると、さすがに吐き気をもよおした。仲間が殺され、死の操り人形になっている。死の安楽を奪われた、死人騎士。それは未来永劫に救われぬ地獄の魂なのだ。
「許せぬ! 我が同胞を地獄の亡者に貶める獣神!」
「しまった! 国王陛下が危ない! オルトリオ、後は任せた! バラン、ガント、わしに続け!」 「フェリオ、気をつけろ! 何かがいる!」 同じように殺気を感じたカリムが叫んだ。侵入者は何処だ? ソードを掴む手がジットリと汗ばんできた。ゆっくりと警戒しながらカリムの方へと近づいて行く。敵の目標は新国王に違いない。守らなくてはならないと感じたフェリオだった。
「フェリオ、動くな! 敵はそこだ!」
「獣神ゴーラ!」
「吾に気づかねば、アッサリと地獄に行けたものを! まあいい、ユックリと恐怖を味わうがいい!」
「カリム、逃げて! ここはオレが防ぐ!」 「なっ? レーザーソードか?」 相手の持っているのは普通の剣ではない。咄嗟にグレン・バズトールは剣の直撃を避けた。しかし、十分ではなかった。サッとソードの先が当たった顔面が裂ける。レーザーの傷口は普通の刃物の切り口とは異なり、出血は少ない。が、それにしても、全く出血しないということはない……はずであった。だが、獣神の顔面の傷口からは一滴の血も流れてはこない。
「こいつ、やっぱり化け物だ!」
「レーザー・ソードにエメラルド色の瞳。そうか、貴様がデュオの青い虹、フェリオだな?」
「そうはさせるか!」
「ギャッ!」
「フェリオ、大丈夫か?」
「チッ、あいつに切られた腕をまたやられちまったか……」
「貴様ら、二人共、地獄へ行け!」
「フェリオ、何を……」
「逃がすか!」
「クッ、ちょこまかと逃げ回りよって! ならば、動けぬようにしてやる!」
「フェリオ!」
「ユキ!」
「おのれ! 猫ロボットめ!」
「ミャー!」
「ユキ、ありがとう。助かったよ」
第一章 第二十八話 獣神再臨! ---了---
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己の右腕を使い物にならなくしてしまった猫型ロボットに対するグレン・バズトールの怒りは凄まじいものであった。決して許さぬ。原形をとどめぬほどバラバラにしてやらなくては気が収まらない。左手の爪が剣のように長く延び、ユキの頭部を襲う。しかし、小さな身体を生かし、右へ左へ、上へ下へと逃げ回り、相手の隙を見つけては、巧妙に攻撃を仕掛ける。最初はユキの出現に眼を丸くしていた少年二人も、猫型ロボットの活躍に勇気を覚え、改めて攻撃に加わった。獣神の手がユキを狙って振り下ろされると、フェリオがソードで背後を狙う。振り返り、爪を振り上げると、カリムが右肩の傷口に剣を叩き込もうとした。頑丈にコーティングされた表皮とは異なり、剥き出しの機械が覗く傷口はもろい。振り上げた爪で剣を受け、跳ね返した。だが、その隙をついてユキが足に牙を立てる。
「おのれーっ!」
「先ずは、貴様からだ! デュオの青い虹!」
「フェリオ、頭を下げて!」
「ダイアナさん……」
「もう大丈夫。後は私に任せて」
「SAP(SPECIAL ARMED POLICE)のダイアナか……」
「あらっ、私のことを知っていてくれたの?」
「ああっ、我が輩はあんたのファンなんだよ。銀河パトロールのキヨネ山本と二人で、散々シンジケートの邪魔をしてくれる絶世の美女だ。殺したいほど大好きさ」
「勝負は預けた! また会おうぞ、ダイアナ! 次は我が輩の爪で貴女の心臓をえぐり出してやる!」
「どうやら不利を悟って逃げたようね」
「それにしてもフェリオ、酷い姿ね。あっちこっち傷だらけじゃないの。ユキ、手当をして上げて」
「ミャー」
「どうしたのよ、フェリオ! 何を落ち込んでいるのよ?」
「オレ……本当に役立たずで……」
「君ねえ、何か勘違いしていない?」
「君は、カリムや私と比べて、うまく戦えないことを悩んでいるんでしょう? だったら、それは大きな間違いよ」
「私が強いのは、グレンと同じサイボーグだから。カリムが戦士としても、王としても立派なのは、そのように育てられたから。フェリオとは違って当たり前なのよ。それよりも、何の訓練も受けていなかったフェリオがここまで戦えたことの方が素敵なのよ。剣や政治のことは勉強すれば強くなれる。でも、フェリオの持っている優しさや、正義を貫こうとする気持ちは誰にも負けてはいないと思う。それに、ライヤを愛する気持ちもね」
「私、ちょっとライヤが羨ましいな。だって、こんなに愛されているんですもの。私の好きな男の人は……」
「それに、今回のことは私のミスでもあるわ。相手は、あのヴレン・バズトールだってことをスッカリ忘れてしまっていた。レーザー・ソードは攻撃には最強の剣だけれど、守りにはむかない武器だった。私たちはレーザー・ソードを武器として使う時、必ず強力なシールドを使うのよ」
「ダイアナさん、ソードで戦う方法を教えて! オレ、ライヤを守りたい。悪い地球人になんかに負けたくないんだ!」
「ユキは何処に行ったの?」
「フォレスト、どうするつもりじゃ?」
「まだ時がきてはおらぬのかも知れぬ」
「ダストル、いるな」
「王宮の様子を見てまいるのですな」
「小一時間ほど休憩しよう。竜も、騎士も、疲れているはずだ」
「おいっ、待てよ! ユキ、何処に行くつもりだよ!」
「あっ、サリヤ姫!」
「気づかれた!」
「お姫様、忘れちゃった? ほら、カナン国で……」
「あの時はありがとうございました。お蔭でオレたち助かりました」
「フォレスト、どうした?」
「フェリオ、どうかしたのか?」
「サリヤ姫……」
「このようなところで命の恩人に会えるとは運命の悪戯ですな、サリヤ殿」
「お主は……やはり、あの時の少女か?」
「まあ、あの時も今も姫様も少年騎士姿なのですから、お互い様と言うことで……」
「サリヤ殿、せっかくこちらまでこられたのです、どうか私の家までおいでになりませぬか?」 もしや、敵国カナンを探りにきた密偵か? いや、それにしてはメンバーが妙だ。眼の色の異なる女と少年。目立ち過ぎる。密偵ならば、できるだけ目立たぬ方が有利に動ける。様々な疑惑が脳裏を過ぎる。しかし、これといった答えが出ない。
「フォレスト……」
「ご招待に応じられるがよろしいでしょう。せっかくデスペラードの王子殿下自らがわざわざお迎えにこられたのだ」
第一章 第二十九話 獣神撃退! ---了---
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「なっ……」 思わず仮面の男と、カリムを交互に見る。この少年がデスペラードの王子? 信じられぬ展開にサリヤは呆然と立ちつくしていた。噂で聞いた王子は粗野で乱暴者。人殺しを厭わぬ殺人鬼だと言われている。だが、どう見ても、そんな風には見えない。それに、王子がたった二人の供しか連れず王宮を出てくるだろうか? 「違いましたかな?獣神を追って貴国に進軍してきたが、一度も貴国の軍隊には出会うことなくここまでこれた。それは、私共が注意深く進んできたからだと思いたい。だが、それではあまりにも不自然だと感じていた。道筋には、貴国の民とも何度も遭遇した。自国の軍とは明らかに装備の異なる竜騎が通れば、誰かが王宮に知らせるはずだ。にも関わらず、何者も我々の進軍を妨げなかった。だとすれば、我々をこのまま王宮にたどり着くまで見逃すつもりではないか。では、何が目的だ? 罠か? そう考え、ここで様子を探っていた。そうすると、あなた方が現れた。誠にわざとらしい現れ方だ。更に、あなた方はカナンでサリヤ姫に助けられたことがあったと言う。その当時、デスペラードは国王が獣神に帰依し、王子を反逆者として捜索していた頃だ。そこまで考えれば、答えは一つしかないと思うが……?」 サリヤはフォレストの示した見事な推理に舌を巻いていた。寡黙な仮面の舌で、このようなことを考えていたのか。ではやはり、この男はデスペラードの王子か?
「仮面の騎士殿、残念であるが、私は王子ではない」
「私はつい先日、父の後を継ぎ、デスペラードの玉座についた」
「国王陛下が正体を明かし、我らを招待なさるということは、我らを正式な賓客として招かれるということですな」
「よかろう。招待に応じましょう。新デスペラード国王が、恩知らずでもなく、敵を油断させ、卑怯な手段で隣国の姫を抹殺するような人間ではないことを証明していただくために」
「入ってもよろしいかしら?」
「息子がサリヤ姫は、旅先で、着替えなどお持ちになられてはいないのではと申すので、私のお古ではありますが持って参りましたの。どうか、袖を通してみませんか?」
「よく似合うわ! やっぱり女の子はドレスが一番きれいに見えるわ!」
「あっ……あの……」
「あーっ、やっぱり可愛いわ! 思った通りの可愛いお姫様だこと!」
「あらっ? 気にいらなかった? とっても似合っているのに……」
「じゃあ、何も問題はないではありませんか」
「私ったら、息子が可愛いお姫様を連れてきたって聞いたもので、スッカリ舞い上がってしまって……。おほほほ、ごめんなさいね、サリヤ姫。自己紹介もしないで」
「私、カリムの母ですの」
「本当に、あれがサリヤ姫か……?」 「息を呑んで見つめていたのは将軍たちだけではない。玉座で待ちかまえていたカリムもまた、目を見張っていた。魅力的な少女だとは思っていた。だが、これほどだとは想像もしていなかったのだ。
「サリヤ姫、お手を」
「サリヤ殿、今のように、もしカナンが危機に遭遇したなら、我がデスペラードは直ちに救援の手を差し伸べるでしょう。そして、もしも我がデスペラードが危機に瀕した時は、サリヤ殿……」
「ライヤ、オレは任務を果たしたよ」
第一章 最終話 取りあえずの終章! デュオの仮面騎士 ---完---
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